第95回 箱根駅伝 東海トレーニング

西出仁明ヘッドコーチ
(体育学部競技スポーツ学科准教授)

アメリカ・オレゴン州での合宿で世界と戦う力を身につける

――今年2月から4月にかけて、鬼塚翔太選手(体育学部3年次生)、關颯人選手(同)、阪口竜平選手(同)、
館澤亨次選手(同)がアメリカ・オレゴン州で約2カ月に渡る合宿を張りました。
アメリカで合宿を行う利点や目的を教えてください。

西出仁明ヘッドコーチ

世界のトップランナーたちはどんなトレーニングをしているのか、ウエイトトレーニングをはじめとしたストレングストレーニングについても自分の目で内容やメニューを見て、チームへと還元することが目的です。日本にも情報としてさまざまトレーニング方法が入ってきますが、どの部分を強化するためのトレーニングなのか、その成果が走りにどう影響するのかなどが分からないことが多いのも実情です。だからこそ、自分たちの目でトレーニングの風景や雰囲気、指導中のアドバイスなどを見ることが大切だと思います。
練習の拠点となったオレゴン大学は、各国のランナーに施設を開放しています。河川敷を利用した広いトレイルコースもあり、世界屈指の実力を持った選手たちがトレーニングに励んでいます。今回の合宿では、現地の指導者に東海大学の選手たちが目標としているタイムやレースを伝え、練習メニューを考えてもらいました。海外の選手は日本よりも練習時間が短いと考える人も多いようですが、実際にメニューを見るとオフがほとんどありません。また、日本ではポイント練習の内容などを事前に選手たちに伝えることが多いのですが、現地では、走る直前にメニューが発表されます。事前に選手たちが練習メニューを知っていると、「今日の練習は余裕を持って臨める」「今日はついていけないかもしれない」と壁をつくってしまうことが多いからだと聞きました。私自身も新たな発見でしたね。
もう一つ挙げるなら、日本ではほとんど行われていないインドアレースを経験させたいという思いもありました。

西出仁明ヘッドコーチ

――日本で行われないインドアレースを経験することのメリットを教えてください。

日本には、気候に左右されず、かつレースができるだけのキャパシティーがある施設が少ないという事情があり、インドアレースは盛んではありません。さらに日本にはロードレースという文化も根付いています。一方でアメリカにおける陸上競技のシーズンの流れは、気温の下がる冬場から春までは室内でのトラックレース、春から夏にかけては屋外でのトラックレースと移っていきます。秋は基本的にオフシーズンです。さらに日本の場合は、箱根駅伝やフルマラソンなどが冬場に行われることが多く、なかなかインドアレースを開くタイミングがないのです。
インドアレースでは、1マイルや3000mなど日本では設定されていない短い距離でのレースを経験することができますし、日ごろ一緒に走ることのできない世界トップクラスの選手も出場します。日本のレースでは見られないレース中のスピードの上げ下げや、ラストスパートの切れ味の鋭さを体感することができるのです。将来、世界を舞台に戦いたいという夢をかなえるためには、間違いなく経験した方が良いと思います。

――合宿中の2月に行われたボストン大学で行われたBU last chance meet1マイルで、
館澤選手がインドアレースの日本記録となる4分3秒38をマークするなど、結果を残して日本へと帰国しました。
アメリカ合宿を経て選手たちが成長した点について聞かせてください。

先ほども話した通り、各選手に足りない力が明確になったこと。さらに、海外で戦う上でのタフさも身についたのではないかと考えています。日本国内でのレースでは、大会の1日から2日前に現地に入り、食事や宿泊場所も整った環境で本番を迎えます。しかし、世界のレースでは、移動時間が長く、大会当日に現地に入ることもあります。食事も好きなものが食べられず、ルーティーンを崩さざるを得ない場面もよくあります。自分の思い通りにならない環境でも持てる力を発揮するためには、そういった経験を何度もしておくことが大切です。国内外問わず、レースが事前の想定通りに進まないことももちろんありますから、どんなことにも動じない精神力をつけなければならないと選手たちも感じたのではないでしょうか。これからも将来につながる経験を積んでほしいと思っていますので、今後も海外を拠点にした合宿を継続していきたいと思っています。

――国内外で力をつけた選手たちが箱根駅伝に挑みます。どのようなレースを期待していますか?

夏合宿で故障者が出てしまい、足並みがそろわない中で出雲駅伝、全日本大学駅伝と戦ってきました。箱根駅伝に向けて、ようやくメンバーがそろってきたという印象があります。例年は全日本大学駅伝が終わった後は、記録会などに出場しながらコンディションを整えてきました。今年度は、長い距離にも対応できるよう合宿での走り込みをメインにコンディションを調整しています。選手たちの状態は、疲労度や練習の消化具合から見ても昨年度よりいい状態です。総合優勝を果たすためには、各区間ラスト5kmでスピードを上げ、粘り切ることが大切。練習でも選手たちにその部分を意識するように伝えています。